[そうして薔薇を渡したとき、花屋にもうひとつの人影が現れた。朗らかに声を上げた女性はここの店主、カサンドラ>>149。―――「もしかして買いに来てくれたの」、とそれは驚きを持ったように聞こえて。ああ、もしかして不味いところを見られたかなあと、そう思った。花に対する情緒を介さない後ろめたさもあったし、まさか興味を抱いているなんて思われてはいけなかった。そこに混ざる弾んだ声色。その訳は気づかない。どうして少し嬉しそうなのだろうとか、そんな疑問は溶けていく。そうしてまた、すれ違う。]