[空堀を掘るだけの時はなかった。が、工兵を多く留めたのは何も砦の外での工作のみを期待したわけではない。男は、工兵らに投石器の用意を命じてある。簡易なものだ。梃子の原理を使って木で組まれるそれの射程はさして長くない。投げられる石とて、さして大きなものではない。けれど石ならば拾ってくれば、無料《ただ》である。いかに森の民の弓矢とて無限にあるわけもないのだし、何より、] (驚けば人も馬も足が、少しでも止まる)[結局のところ、全ての細工はそこを目的とするといっていい。]