― 回想 ―
[ 石に頭をぶつければ痛いのが道理。
ならば何度繰り返しても痛いのもまた道理。
しかも当時に至っては、
王宮の柱と額を勢いよく突き合わせる
そんな羽目に陥ったのは初めて。
何を急いでいたのだか、
がつんと音のするほどの衝撃に
さながら死にかけた病人のように呻いていたら
ひらりと過ぎ行こうとする金色が目に留まる。 ]
ラメールの軍人さんは怪我人を見ても
放っておけと教えられているのかな?
…それともきみが特別薄情なだけ?
[ 高く結われた左右に揺れる髪を
呼び止めるように背後から声をかければ
歩みを止めてくれたのだったか。
もし振り向いてでもくれたなら
にっこりと微笑みを返してみせただろう。 ]