[ともあれ、怯えた子羊をなだめるカタリナへ視線を戻し、再び口元をへの字に曲げた。
せっかく羊探し手伝ってやったのになー、という子供じみた不満と、彼女が羊たちをいかに大事にしているか考えるべき、という冷静な指摘が、胸の内でせめぎ合う。
本当は、彼女にとって羊たちが大事な家族の一員なのはわかっている。
……わかっているけれど、ないがしろにされたようでやっぱり面白くないのである。
ディーターが声を掛けてきたのは、そんな微妙なタイミングだ]
食いもんじゃねーよ。
おっさん、タチの悪いジョーダンやめろよな!
[右腕のない、ガラの悪い飲んだくれ。
日頃であれば、そんな彼をちょっとばかりカッコイイと思ったりしないでもない。
悪い大人に心惹かれるお年頃なのである。
けれど、今は到底そんな気分にはなれないのだ。
自分の日々のしょうもない立ち振る舞いを棚に上げて、噛み付くように文句を付けた]