[ ひときわ良い毛並みを持つ獣。
――――それが子羊であり
神への供物として使われる存在だということ
それすら忘れていたのだと気がついたのは
白い毛並みが、蘇芳に染まっているのを見た時。
村人は、ただ己の信心を捧げただけ
だから彼らを恨むなど筋違いなこと
間違っていたのは、自分自身。
神の手足であるならば
手足として、そこに意思などは必要ない
なにかを特別に気にかけるなど
そもそも、あってはいけなかったのだと
神だけを見つめていればよかったのだと
強く思ったのを覚えている*]