― ここではないどこか・ジェフロイと ―
[頬を撫でて滑る風が、外気の冷たさを運んでくれる。
そう、"願い"の後、男は熱を、冷たさを感じられるようになっていた。
ヒトだった時と同じように、人の肌の温もりを感じられる。
そんな簡単な事柄に、驚きを隠せずにいた。
完全な吸血種は、五感も人のそれと同じなのだろう。]
――ジェフロイか。
[不意、背後から掛かる声に振り返る。
彼の穏やかな声音に聞き入った。]
私が、鑑定師や騎士のふりをしたのは…
ブランに貢献した上で、処理施設に行きたかったから、
それが一番大きかった。
単なる、自分のエゴだ。故に、礼を言われる筋合いはないよ。
[尤も、鑑定師の時は本気で鑑定師を護る心算もあったのだけれど]