[音の鳴る古い木箱も、五年前の誕生日に届けられたものだ>>233。贈り主はクレメンス卿。随分と珍しい相手からの献上品だったから、どういう心境の変化かと驚いたのを覚えている。中に何か入っているのだろうかと蓋を開ければ、物ではなく……異国の曲の贈り物。オルゴール、というものだと後で知った。裏側の螺子を巻くと、途切れた音が、再び鳴り出す。けれど――――途中でぷつり、と其れは消えた。もう一度巻く。やはり、途中で終わる]