―― 第1エリア・避難艇付近 ――
[あの男がこの場所を去ってからどれくらい経ったころか。
耳に届いた人の声に、ふ、と意識が浮上する。
先程同様見知らぬ顔――と判別するには、視界の方がぐるぐると回っているものだから、覚束なくて。>>347
まだはっきりしない頭では、先程の通信が届いたか、返信があるかの確認もままならず。
ともかくも、真っ先に口から出たのは、]
――…避難、早く逃げな。
あァ、避難艇ダメなんだっけ、
だったら、メイン・サロンまで……ドロイド、さっきはいない、
ん、今は、そうとも限らな……い、か、
護衛するから、ちょっと待っ……
[避難艇が駄目だという情報を齎した男の正体が分からない以上、避難艇の状況は違うものであるかもしれないし、(実際そうであったように)あの男も真実を語っていたのかもしれない。
けれど、そこまで思考は回らずに、避難艇は駄目だとそのまま語った。>>336
ともかくも、目の前に現れたそのひとに、警戒心が湧かずにいるのは、
その声に聞こえたのが、純粋な気遣いのように、思えたからかもしれない。
――先程のようにもし何か、重ねて切っ掛けがあるならば、気づくこともあるかもしれないけれど。]