[イドが何故それに気づいたのかは理解出来た。
香をつけぬ男の唯一の匂いが、仄かな硝煙の香なのだ。
身を清めれば落ちるけれど、狩りに出ればまた付着する香。
恐らくはそれに反応したのだろう、
イドはカレルのベッド下へ潜り込んだ。
包みか何かに覆われているか、或いは。
解らずも、イドの目を通して見えた銃把の刻印、
某社で直ぐに製造中止になった自動拳銃。
そもそも、王国の刻印入りの拳銃は、リボルバーしか存在しない。]
――…、……どこかで…、
[この銃を見た気がするし、自分のものだった気もする。
というか、こうして忘れている事柄が、他にもあったような気さえした。
思案する男の思考を余所に、カレルの部屋の男のイドは
クレステッドのイドとかち合うか。
先程と同じように、「ピィ」とか「ギィ」とか声を発し
男のイドはカレルの部屋を後にした。]