延ばした手がもう届かないというところにあるのを痛切に感じる出来事もあった。
[最悪の別れをしてそのままごめんもちゃんと言えなかった女性のことを振り返る。
あれから彼女は自分の前に姿を見せていない。
賢明である――次は、問答無用でイングリッドが来れば捕らえよと命じてあった。
実際、こうやって平原で敵の黒い集団が双眼鏡で見えるようになってまったくソマリアードのいうことは正しいと頷く。これで規模を間違えるのは鷹の目では有り得ない。
結局、彼女が騎士団本部を出てゆくまで、あきらめることすらできなかったのだ――]