[ 『ヘルヘイムより、死者の爪を』などと
不吉めいた文字の刻まれた箱で>>341
海賊船に運び込まれた少年とは
まだ思い出せていなくとも。
違うかもしれないが、自身の生年月日さえ
正確には把握できないような
生まれ育ちなのだろうか、と。
貧富の格差の激しいこの国の社会では
珍しいことではないかもしれないが。
彼が話してもよい様子なら聞くだろうが、
そうでないかもしれないのに。
どういう生まれなのか、
うっかり尋ねかけた唇を、はっとして噤んだ。]