(……でも、そうだ、……船で)『【エルンスト・ヒンメル】は、この街で死んだことになっている。だから俺は、昔の知人にそう名乗るつもりはない』[船上で彼が告げた言葉に、ローと己は、顔を見合わせた覚えがある]『死んだ?』『ああ。――卒業後のことだ。どこまで知られているかはわからないが』『何故そんなことに?』『罪を犯して、追い詰められ、崖から馬ごと転落した』[淡々と告げる顔に、笑みはないが、動揺もない。 戸惑ったように尋ねた己の声のほうが、余程揺らいでいたようにも思う]