― バルコニーで>>342 ―
[精神的にも肉体的にも消耗して、ぐったり長椅子の上。
血は足りているかも知れないけれど、そういう問題ではない。
白絽侯の囁く甘い睦言には、半分も答えられない。
けれど、彼の重みが消えた時には、やっと開放されたという安堵だけじゃあなくて、惜しい、と思ってしまったのもまた事実。
まだ動けない身体を長椅子に横たえて、腕に兎のやわらかい体のぬくもりを感じる。
吸血鬼はだいたい体温が低いみたいだけれど、白絽侯から滋養を貰ったせいか、ほんのり温かい。
脇腹に鼻先を押し付けられて、ツェーザルの顔が見えるように姿勢を変えた。
騒がしく脳天気なツェーザルらしくない、しんみりと切ない声の響きが気になる。]