[人形の動かし方を覚えた頃の夢だった。
『彼女』はいつも、笑ってくれた。その笑顔を見るのが、ほんとうに、ほんとうに、大好きだった。
星の赤い薔薇。楽しんでくれるひとの笑顔。
そんな取りとめもない追想に、ふと、昨日山道で出会った彼らの顔が――夕陽のように鮮やかな髪が、雪のような白の毛並みが、浮かぶ]
あんなふうに……
[『楽しませてくれて、ありがとう』>>331、ディーはそう言った。
驚いた。彼女の芸は、人を驚かせたり関心を買うことはあっても、楽しんでくれるひとはそれほど多くない。子供に泣かれることも日常茶飯事。
投げかけてくれたその言葉は、彼女の『夢』に近いところにあったから、そのことにも――驚く。]
『子どもの頃一度見たきりの人形劇を思い出せるなんて、その人形使いと人形はとても幸せだね。
そんなお客さんに会えて』
[そう言葉を返した。]