―回想:花屋にて(>>337,>>338)―
――この世界にはね、不可能なことなど何もないのだよ、きみ。
[対応が不可能という言葉には、やや強い語調で応じたろうか]
古い知人に教えてもらった、古い言葉があってね――、
『Nothing is impossible, the word itself says "I'm possible"』
不可能という単語でさえ、私は出来ると言っている――という意味なんだがね。
[その知人は、いまでは、ウイルス学の権威にまでなっている]
――私ら科学者にとって、不可能というのはだね。
現代の科学では、まだ――という、但し書きがつくものなのだよ。
私ら科学者の仕事は、その但し書きを外すことでね。
考えてもみたまえ――、
重力井戸の底、温暖な大気と豊富な水のなかで生まれた我々の遠い祖先。
彼らにとっては、この冷たい星海を自在に渡るなど――不可能どころか思いつきもしなかったはずだよ。
[そう一息に、言い終えた。返事さえ、期待していなかったろう]