[殆ど自室から出ないこともあって、他のマスターたちと交流はあまりなかった。
トールとアレクシス(そういう名前だった)だけは一度、街に出かける前にディークが自作の菓子を贈ったのを知っていたが、その後はアレクシスが帰郷したとやらで会っていない。
戻ったら二人の仲がどれだけ進展したか確かめるために招待しよう、と心に決めていた。
友人の預かった娘のことも気になっていたが、タイミングを逸していまだにエレオノーレを訪問するのは叶えられていない。
推測どおりなら、その娘はディークが殺した旧主の息女だろう。
この頃ではディークは大分落ち着いて笑顔を見せるようになったとは言え、問題の記憶の空白の核心に関わる部分に触れるのは時期尚早と見ていた。
ディークに気付かれぬよう、こっそり短い手紙を認め、従僕に託して友人に届けて貰った。
ディークとアイリス嬢の関係について、知っていることがあれば教えて欲しい、とそこには書かれていた。]