― 現在:ホートン砦 ―
[ 1時間誰も入れるなと、従僕役の魔物に扉を任せ、
ソマリアードのものだった部屋に湯を運ばせた。
飯炊き女に手伝わせて、マントを外して軽鎧を脱いだ。
剣だけは傍に置く。
一勢力の指導者らしからぬ警戒ぶりは、彼が魔物すら信じていないことを窺わせた。
よく鍛えられた大柄な体は、年齢による衰えをまだ感じさせない。
体にも手足にも、網目のように傷痕が残っていた。刃物による物もあれば、爪牙による物もある。
背の傷は少ないが、左脇腹に抜ける物が目を惹く。
下手人が外したのか、テオドールが避けたのか。もし、その傷がもう少し上ならば、テオドールが今ここで生きている事はなかっただろう。 ]