[視界に収めた人間からは、ヒトにしては稀有な力を覚えた。
造形に因って本質を見定める属種ではないが、
器に反する膨大な力に、小さく鼻を鳴らした。>>348
混乱している彼を観察する双眸は、品定めに似ている。]
―――…方角すらも知れませんか?
教えていただければ、貴方を特別害そうとも思いませんが。
[彼を見下ろしながら、告げる言の葉。
しかし、虚ろな眼差しを読み取れば、ふむ。と吐息を漏らして、
己の生み出す影が、足元から太い腕のように伸びた。
彼が過剰に反応せねば、闇の手は両脇を支え、
相手の足先を草原より僅かに浮かせて、質問続行の算段。
傍目から見れば、ヒトを搾取する魔物と大差ないが、
元より根源は似通っている。致し方ない。]