[>>338城主は笑うのを隠す気もないらしい。
一瞥されても男は取り繕った笑顔を浮かべたまま。
残り香から逃れようとするかのように、空けたグラスは早々に机の上に乗せてしまえば、影がそれを引いただろうか。
――男が町で働いている頃には扱わなかった代物だ。店に置いていたのは古城に釣り合うような高級品ではなく、街に住まう人々の生活に必要な簡素で親しみ深いものばかりだった。]
――…射止めた後にはどうされるおつもりつもりやら。
[もっとよく知りたいと告げる言葉には、新しい玩具を見つけて束の間その反応を愉しんでいるだけだろうと。
飽いたらきっと見向きもしないのだ。…かと言って、飽かれるまで自分が大人しくしていられるとはとても思わないが。
幾つかの思惑の混じった視線を送ったのみに留まられた事に、内心では安堵していた。*]