[船内を縦横無尽に遊びまわっていた子供は、機関室にも度々入り込んだ。
並みの大人よりも強い力を生かして、力仕事などの手伝いもしていたのだけれど、
今になって思えば、マーティンはそういうことよりも、子どもがする“当たり前のこと”を自分に与えてくれていたように思えるのは、果たして思い過ごしだろうか。
最初に機関室に飛び込んだとき、そこにいた男を見て自分が言った一言は、確か――…]
ね、マーティンはつるぴかなのに、
おじさんはふさふさしてるの、何で?
[――うん、昔から自分はこうでしたね。
(知る由もないが)『この艇は託児所か』と船長に食って掛かっていた――もしかしたら、案じてくれていた男は、闖入者の子どもを、どうしたのだったか。>>0:391>>0:392]