― その時・ベルサリス学館にて ―
――――……ッ、はぁ、
[ユレ家は学者の家系であり、多くの知識をナミュールに与えていった。
その意味では名門の家系ではあるが、然しあくまで庶民の血。
そのアレクシスが、ベルサリス学館で学び、そして教職に就くのは、必然とも言えるものであった。
決して金持ちではなかったので、王府の学館に入れるはずもなく、誰でも門戸を開いている此処が、最もユレの性分にあっていたのだ。]
頭が重い……
[アレクシスはこめかみを抑え、学館の廊下に依り掛かった。
気分を晴らそうと、ポケットから飴玉を取りだし、舐めてみる。
けれどもなかなか、気分が晴れる事はなく、細い息を吐いた。
―――…… 耳鳴りがする。
しかも何だか、誰かに呼ばれているような。
頭の奥で、凛とした声が響く。一体なんだこれは。
アレクシスは至極真面目で、そのユレの教えに従って今の今まで生きていた。庶民である事に特段何の不満もなかったし、きっとこれからも平々凡々で生きているのだろうと。そんな風に、ぼんやりと考えていた。]