―回想 10年前―
[初めて村を出て街へと訪れたのは9才の冬。
多くの命を奪った酷い銀嵐の起こった年だった。
初めて見る景色。
雪に閉ざされる村とは違う空気。
そしてなによりも、見た事もないほどの数の見知らぬ人間。
村に見知らぬ人間――旅人が訪れる事はそう珍しくはなかった。
それでも、12になるまでに村人の特徴は全員分覚えていたから、間違える事は多くても見分けはついていた。
だが、そこに居るのは全く知らぬ人々。
子供だったのもあるのだろう。
初めての場所への好奇心よりも這い上がってくる不安に振り返り。
――そこに居る筈の両親が分からなかった。]