― 先のいつか ―
[色々な出来事を経て、色々が変わって。
今までと違うあり方の中で、それでも、いつもの日常も続いている──そんな時間を幾つか、数えて]
……うん。
やっぱり、今日の月、凄く綺麗。
[年に数回しか見られない、特別な月──『斎の民』が『白銀月』と称する力帯びた満月を、寝室の天窓越しに見上げつつ、漏らしたのはどこか嬉しげな声。
滅多に見られない現象だから、とその観測に引っ張られた事にレトは何を思ったか。
そこまでは考えないまま、柔く白い月灯を受けて幼子のようにはしゃいでいたが。
不意に、居住まいを正して、淡い緑をレトへと向けた]