[一度は、兄に命を救われたことすらある。
未だ馬に乗り始めの頃。大人しい馬が選ばれたにも関わらず、危なっかしい乗り手は走り始めた馬の上でバランスを崩し、あわや落ちるかというところに同じく馬で駆け付けた兄が馬体を合わせ、弟を助けてくれたのだ。
少年二人の姿を見守っていた大人たちは青くなったことだったろう。その中には、在りし日のチェンバレンの顔もあったはずだ。どうにかその場は事なきを得て、ウェルシュの乗馬の訓練はまた少し先送りにされてしまった。
兄はその日から、幼い少年の中の
──── あれから、もう何年か。]