[ わたしは、声を張り上げる。
その一方で、心の中で、ごめんね――と、わたしがささやく。
もしも――そう、あのころは、ずっとそう考えていたんだ。もしも、この薔薇が意地を張らずに、最初の予定通りわたしをばらばらにして、使ってくれていたなら、もしかしたらもう少しだけ――彼女は元気でいられたんじゃ、ないのかな。
また、旅に出る。帰ってくる。
扉を開ける。
薔薇は、散っていた。
咲き終えた薔薇は、もうどこにもいなくて。ただ、花びらだけが残されて。
その花びらが押し花になって、いまも――
この鞄の中に、残っているのだ。
夢のおわりに、コッペリアが、振り向いた。]