[いずれにせよ、その人間が魔王を倒す『勇者』とやらであるのならば、することは一つだ。
珍しい色の双剣を携えて向かい来る彼の動きに目を細め、左腕に魔力を溜める。
それを撃ちだしていては迎撃に間に合わない。
相手の速度を冷静に見切った目が、次なる手を見出していた。]
止まれ
[吐いた気ひとつ。
足元に向けて放った拳が衝撃波を産み、全てを吹き上げる暴風の壁となって波紋のように広がっていく。
それは風の刃の大部分を飲み込み、さらに吹き荒れた。
衝撃波の壁を裂いて飛来した矢が首の皮を薄く削っていき、そこにも緋色がわずかに滲む。
別の矢が胸の中心へ吸い込まれようとするのを、魔力帯びる手で掴んで止め、握り潰した。]