― 回想 ―
あにうえー!
けんのけいこ、おねがいします!
[中庭に幼い声が響く。当時、幼い少年の目に4つ年上の兄はずっと年上に見え、快活なその姿は彼の憧れだった。
剣を握り、自らを鍛え、子どもながらに次代の国を守らんとの意思に凛と立つ少年。自分もあんな風になりたいと憧れた。だから兄が剣の稽古に誘ってくれれば喜んで応じたし、稽古のあとは熱心に一人で剣の素振りすらした。次に見て貰う時に、上手くなったと褒めてもらいたかった。
大体そんな日の夜にはすぐ熱を出し、……それで母が兄を叱っていたなど、随分と後になって知ったことだったけど。>>75]