―回想:大臣襲撃事件後・帝国基地某所―[拾い主と向こうの親類が旧知だった縁で、卒業後もウェルシュとは顔を合わせる機会があった。伯爵位を継いだ挨拶にとロスチャイルド邸を訪れた彼は、僅かな緊張と…東寮で1年間しばしば見かけたしたたかなイイ笑顔とをバランスよく混ぜた、柔和な立ち振る舞いの未来有望な若き伯爵に変貌していた。それが――…公国大臣襲撃事件を契機に、明らかに変わった。感情を覗かせぬ柔らかな表情は、芯の崩れた笑みに。怜悧な眼差しは、何処か遠くを映す空虚なものに…]