――コールを受ける前――
[大丈夫であると半分嘘を伝えれば、
なぜか相手は大きく息を吐いてその場にへたりこんでしまった。
それがなにかわからずに、ぽかんとした表情で相手をまじまじと見つめるだろう。
まさかそんなに心配してもらえるとも思ってなかったし、
優しすぎる人なのだろうか?それにしても安心しすぎではないだろうか。
人との関わりを避けてきた女には、わからなかった。
疑問とそして申し訳なさを抱えつつ。疑問は頭の隅に置いて。]
ご、ごめんなさいっす、ご心配おかけして…っす。
[ひとまず謝った。
謝ったところで、どうこうできたものではないが。
そもそも、間接的には目の前のこの男性のせい、なのだけど。
まさか目の前の相手が『恋天使』とは知らないし、
“恋人”が心配だったから、なんて可能性は思いもしない。…今はまだ。
相手の内面の恐怖や安堵を知らぬまま、
誤魔化すように、まだ不調の残る体をおして立ち上がる。]