[無意識のままに、次の詠唱をトオルへ向けようとした時、トオルに回復を拒否された>>303。
今のを、視られていたのだろうか。いや、そんな余裕はないか。
術式のファンブル。怪我人に動揺する新人癒者によくある失態だ。
そんな物を、この自分が?
それは、決して失敗を赦されてならないと考えるアイルリートのプライドを大いに逆撫でた。
だから、アイルリートは行き場も不明な怒りに強く握り締められた拳を…]
…… …… …… ……づっ!?
[猛毒で激しく脈打ちを繰り返している自分の脇腹に叩き付けた。
目の奥で白い光が点滅しそうな激痛が、脇腹で暴れ狂う。
だがその激痛で、堂々巡りになりかねない感情を強引に押さえつけて]