──── 展望ラウンジ ────
[私は1人、ラウンジの真ん中で体操座りをしていた。]
逃げちゃった…
[大きな溜息をつきながら、顔を膝に埋める。
この船に乗る前の母の言葉を思い出した。
"沢山の人と話してらっしゃい。
貴女ももう閉じこもってばかりいられないのだから。
……わかったらほら!行ってらっしゃい!"
そう言って、微妙な表情を浮かべていた私の背を押してくれた。
…私だって、あのままじゃいけない事はわかっている。でも、やっぱり恐怖心を拭い切る事はできない。
ゆっくりと時間をかけて話して相手が良い人だと思えてやっと、限界まで引き上げられた警戒心が解けてくる。
────それもこれも、アレのせい。
嫌な記憶が蘇って、払拭するために勢いよく立ち上がる。手に持っていた薬の袋がカサリと音を立てた。]