「……そう。 笑っていたの、にいさま」[兄が一部の親しいものにしか笑みを見せていなかったのは知っている。 感情を抑えて、人に踏み込まれるのを厭っていた事も。 その兄が笑っていた──つまりは、感情を抑える必要がなくなったのだろう、というのは容易に察しがついて。 それが、純粋に嬉しかったから] 「……よか、った……」[零れ落ちたのは、心からの安堵を込めた言葉。 同時に、滴がひとつ、ふたつと零れたけれど。 彼女の表情にあるのは、嬉しげな、笑み]