大丈夫だ、ありがとう。 [あまりにも呆然として、傷には気付かなかった。 何の痛みすらも感じなかったのだろう。 すれ違いざまに傷口から血の香がしただけならともかく、皿が割れている現場でしかも対話が出来る状況では、流石に疑われることはないだろうが。 男……確かクレステッドは、ハンカチを…に差し出したが、なぜかその手は震えていたか。だが、そんなこと気にするような心境ではない。 渡されたハンカチで傷口を抑え、ずっと破片を片付ける男のほうを見ているだろう。]