そうだな。 海を、思い出させるようなものがあれば。[警戒心をそっちに持っていかれたせいか、不意の問い掛けに過去の一部が漏れた。俺が元々育った場所はこの村とは全く違う。波の音が常に聞こえ、潮の香りが満ちていた海と共に生きる村だった。年々捕れる魚が減り、騒動が無くとも自然に消えていく定めの村だっただろう。もう帰る事もない、出来ない村。大事にしたい良い思い出は少ないがそれでもこの村にない波の音を聴きたいと思う時があるのだ]