[ふる、と首を横に振る。
表情にあるのは、珍しい戸惑いのいろ]
……御主。
[今度は、はっきりと声に出して呟いて]
……今感じた、力の感触。
忘れようったって、絶対。無理、だ。
……でも……。
[在り得ない。
そう、思ってしまうのは──記憶から消える事のない光景のため。
同時、既に痛みを感じる事のないはずの傷──竜角に貫かれた痕が疼いたような気がして、無意識、右手をそこに押し当てていた。
その肩の上、真白の妖精は俯く青年と、虹の煌きの跡をしばし見比べた後。
きゅう、と甲高く鳴いて──ぴょい、と。跳んだ]