―回想/ガートルード―
[彼の嫌味>>0:74に、顔を歪める彼女は何とも言えない表情をしていた>>260。
次いで身体の傷を見せられれば、少しだけ目を見張った。
薄暗がりでも目立つ裂傷。
それらの傷には見覚えがあったから。
自分が付ける物とよく似ていたから。
どういうことなのか疑問に思ったが、自分の“力”について話すわけにはいかなかったから。
ただ、黙殺した。
それなのに手を差し伸ばしたのは、船長の教えに従って、怪しまれない動きを心掛けていたのが大半を占めていたけれど。
彼女があまりにも必死だったから。
――希望を与えてから絶望に落とすのが、好きだったから。
信用がならないからと突き放すような言葉を掛けたにも関わらず>>0:190、
それでも安堵で濡れた眼をちらと見れば、気付かれないように薄く笑った。
道中、手伝いを申し出てきた女の弟らしい、“同胞”のカレルが手伝ってくれたりもしたけれど、
やはり手が足りなくて怒声を飛ばせば、補助ぐらいはしてくれた>>263。
何とか三人で抜け出して、船に戻った時には妙に懐かれていて。
内心ほくそ笑んでいたりしたものだ。
故に勿論彼女にも、海賊船での生活に馴染むよう、色々手を貸したり、世間話をしたりして。
彼女が自分に懐くように根回しをしていったものだった。]