[ 南の諸領主の思惑はそれぞれあれども、海運に恵まれていて比較的裕福なスルジエ領主の行動は、ベルサリス学館の資金援助の増額とシュビトが外敵に襲われた際の協力体制の申し出以上のものは現段階では明らかになっていない。
外敵とは無論王府軍以外の存在を指し、本来ならば有りえる筈のない危惧であった。
これによってシュビトへの出兵理由の大義名分と共に、現段階では起こり得る事のない外敵、マチュザレム共和国のシュビトに対する侵略行為に備えての南方貴族私兵の駐留許可を南方領主連盟で獲得しようという腹である。
形の上では征伐軍に呼応するように出兵しながらも、実際は学館の蜂起する集団の品定めであり、彼らが此度の遠征軍を打ち払う程の実力があるのなら後援者面をして更に協力姿勢を示し、彼らにその力がなければ忠義顔で国軍と共に踏み潰す。
その場合、王府が実際どれだけ苦々しく思っていようが、更なる南方遠征やその後の統治、それで仮に成功しても彼らが得られるものとそこで費やすものを比べれば、手出しはできないだろうという自信と余裕があるらしかった。]