― 城館:何処かの個室 ―
[施された治療について知る由もなかったが>>324、目を覚ませば柔らかな寝台の上にいて、怠さは変わらぬものの痛みは消えてなくなっていた。
さらに自分を連れてきた偉そうな方の吸血鬼がくだらぬ扱いをするな>>325といったことはやはり知らなかったが、顔や髪に付着した血と土は拭き取られ清められていた。]
………、結局、
[半身を起し、周囲を見回したが、此処にいるのは己一人のようだった。
無意識にロザリオに触れようとして胸元に手を伸ばすが、あるはずもなく。
では、と刺されていた肩口に手を伸ばすも、そこには傷すら残っていなかった。]
…何一つままならない、か。
[持ち去ったであろう吸血鬼の顔を思い出して、唇袖口で拭うと、きつく噛みしめた。]