私は軍医になるためにここにいるんだ。
銃を使う為じゃない。
[冷たくそう言うと、彼は理解できないような、不思議そうな顔をする。]
「軍医でも、軍人だろ?
銃を使えることの何が悪いんだ?」
[首を傾げながらは真っ直ぐな瞳を此方へ向けて続ける。]
「もしかしたら敵が攻めてきて、交戦するかもしれない。
その時、銃が下手だったら患者の命はおろか、自分の命すら守れねぇぞぉ?」
[男はぐっと押し黙る。
彼が言ってることは紛ごうことなき正論。
それはわかる。でも自分は父に命の大切さを学んだ。
失えば帰ってこないとわかっている命を、消すことはできない。
そのままずっと押し黙っているとやがて彼は腕を組み、んー……と唸り出した。]