― 乱の始まる前 ―
[ 悪夢の朝帰りから、ずっと、彼は件の酒楼を避けていた。
けれど、時が過ぎて、思い返してみると、いくつか腑に落ちない事に気付く ]
財布も何も、盗られてなかったしなあ...
[ 美人局の類なら、そんなことは有り得ない。マダムの言ったとおり「密猟者を捕まえる為の」変装だったというのが本当だったとしても、わざわざ酔っぱらった自分の相手をする必要は無かった筈だ ]
...つーか...
[ 情けない思いが募るのは、ほとんど消えた記憶の、それでも僅かに残っていた断片には「優しくされた」という感覚しか残っていないということで ]