[ それから、全ての事情が発覚するまでしばらく時間がかかった。
配達屋が運んでいた"黒い箱"を拾った兄>>299が
部屋に持ち帰った際、誤動作で開いてしまった箱の中から
危険な寄生生物が外部に出てしまった。
不運にもその場にいた兄は寄生生物に感染してしまったらしい…と。
そう大まかに説明はされたが、
実のところ事故が発生した経緯などどうでもよかった。
兄は死んでしまって、自分だけが生きているという事実だけが
ずっしり重りのように心にのしかかっていた。
どうも兄に寄生したのは『特定危険生物』という
カテゴリに属するものだったようで、
同室の自分も寄生されている恐れがあるとして
下船まで隔離されることになったが、それすらどうでもよかった。
むしろ自分から一人になりたいと頼み込むつもりだったくらいだ。
寄生生物について、
メディカルチェックでも発見できないという話は
風の噂で聞こえてきたし、長らく寝ていても起きていても
窓の外の星の海を眺めるだけの日々が続いた。 ]