[アプサラスがヴィンセントの行方を尋ねているのは無言で聞いていたが、彼が血親の相手をしてくれるのなら願ったり叶ったりだ。その方が彼女も実家から解放されたこの城での一時を愉しめるに違いない。――かといって、男がこの城内で出来る事も少ないのだけれど。血親と結ばれた呪によって行動を制限せるを得ないこの身が口惜しくてならない。かといって自由の身となる為に血親を断ち切る覚悟も、男には足りていない。それが男が彼女に‘敵わない’所以なのだろう。]