っ、[我ながら馬鹿だと思う。だが身体は損得を考える前に動いて、獲物を持たぬ方の腕が、地に伏す辺境伯へと伸びた。必死だった。無防備に晒してしまった背を、此処で攻撃されていたならば。間違いなく彼はこの後紡がれる歴史を知らずに無様に土に転がって、長くはない生涯を終えていただろう。けれど追撃は、なかった>>172]