『ダーフィト、何を読んでいるんだ?』[いつもすこし変わった小説を捲っている親友が開いていた、ハードカバー。図書室のものだろうか。変わった表紙は古くて、文字は細かく詩的に綴られている。それは、ひとりの老人が悪魔と賭けをする物語だった。この世の真理に絶望し、不幸の底を漂う彼に、ある言葉を口にさせれば悪魔の勝ち。彼の魂は、悪魔のものとなる。]『面白そうだな。――なんて言葉を?』[そう尋ねた己に、彼はそのページを開いて指し示してくれた](時よとまれ、汝は――)