もし、わたしが抵抗してたら、
……それを口実にして、殺すつもりだったくせに。
[ヤコブがナイフを突きつけた思惑など分からない。
それを知らされたところで、リゼットにとって暴力であることは変わらない。
けれど、それ以上言い返さないのは、彼の指摘する言葉が、少女の心の裡の柔らかい部分を的確に抉っていたからだ]
力がなければ、……死にたくないと思うことも、
赦されないんですか。
[話すだけ無駄と口にして、背を向けるヤコブに言葉を投げる>>307>>311
答えなど期待していない。
――ただ、己の無力が悔しかったのだ]