[一方的に言うだけ言って姿を消した姿は、今でも夢だったのではないかとすら思う。
幸せの形ならどうしてこんな苦しい思いをしなければならないのかとか、大切な相手などいる訳ないとか、まだ多感だった己は素直に受け止め、そして拒絶した。]
……。
[しかし両親が死んだ家で蘇生の方法を知った時>>4:234、暖炉の炎に似た赤が手を差し伸べてくれた時>>0:68、思い出したのはあのしわがれた声だった。
今なら、その理由が分かる気がする。]
我ながら遅すぎて、いっそ清々しいですねぇ。
[苦笑と共に零した言葉は、ひどく震えていた。
死んでから気づいても、いや、死んでからでも気づけただけ、悪くないのだろう。
最良は望まない。悪くないは合格だ。
――それでも、もう少しだけ。]