[「アイツ」とダーフィトに示されれば>>305、盗み聞いている気まずさとともに、ぺこりとエシャクを返しただろう。
自分も疑っていることは、棚に上げ、ニコリと。
そんな自分に、ため息をついていると、エレに「手、怪我してない?」と尋ねられ>>308、慌てて頷いた。]
エレは女の子なんですから、怪我しないに越したことはないんですよ。
気にしないで。
[水仕事である料理人の手が無傷である訳がないことは知っていたが、美味しいものを生み出す手だ。
できるなら、それ以上の怪我はしないに越したことはないだろう。ニコリと笑ってそう言って、粗方片付け終わった食器をまとめる。
そして、エレの視線の先を追うと、そこにはサシャ。
ピアノを弾く約束をしたときとは、打って変わり、酷く険しい顔をしているのに、少し心配になったそのとき。
その口から飛び出した言葉に、思わず耳を疑った。
ベルが殺されて……それでも、強い力を望むのか。
視線が信じられないものをみるような……それでいて、困惑したようなものになった。]