──三年前、公国官邸バルコニー──褐色の肌に紫の瞳。──ヤトの民が砂漠の王であったのは、百年以上も昔の話だ。地図は戦乱の中で繰り返し書き換えられ、強大な武力を持つ他国に襲われたヤトの民たちは、神から与えられた故郷を追われた。あるものは捕まり奴隷として売られ海を渡り、あるものは傭兵として食いつなぎ、今では、流浪の民として各地に散るばかり。