― 病室 ―
[ヤコブから贈り物を受け取ってから、おとの無い歌を歌うのが日課となった。
貰った蜂蜜は数日で無くなってしまったけれど、受け取った想いはローズマリーの中に。
そうして何度も、何日も日課を繰り返しているうちに、気付くものがあった]
(……そっか)
(削られたもの、足りなかったものって───)
[目覚めてから今まで、何が足りなかったのか。
それが掴めてきたのだ]
── ── ───
─── ── ──
[おとの無い歌は想い出の歌から託された子守唄まで、一通り歌うようにしていた。
いつか声を取り戻した時、忘れていたなんてことにならないように。
歌に込められたものを、再度思い出すために]