― ヴァイスメーヴェ ―
[>>262 自分の話がひと段落した時を見計らって、次はタクマが話しだす。
彼の養い子が居た船が沈められたという事は、ウェルシュにとっては初耳だった。驚き、思わず口を挟みそうになったが、堪え、黙る。
どうやら生きているらしいと聞き、内心胸を撫で下ろした。
タルワールを軽く叩きながらそう言う、彼の表情を真剣な顔をしたまま、見詰める。]
………。
[彼の養い子と自分は面識があっただろうか。>>265 彼の養い子を襲ったファミルを、タクマが許すことが出来ないというのは、当然の怒りであった。ここで、そのタルワールを引き抜かないのは、彼の強い理性に依るものなのだろう。
軍人の覚悟の話、家族の話を聞けば、自然と思い浮かぶのは、
―――姉さん。
士官学校に行き、そして家を出ていった姉。
彼女は今頃、何をしているのだろうか。
もしウルケルの海軍に居れば、ゲオルグやタクマ辺りから自分の耳へ、自ずと報せは入ってくるはずだ。
然し、そのような報せは一度たりとして聞いたことがない。
―――彼女は、今、何処に居るのだろうか。]